サボテンの接ぎ木!緋牡丹を竜神木に接ぐ方法を解説

こんにちは、キープランツの野口です!
私は樹木医として後継樹の育成技術向上のために、少しずつ接ぎ木の技術を磨いているところなのですが、今回のテーマはちょっと特殊で、サボテンの接ぎ木です。
接ぎ木されたサボテンで昔からよく販売されているものに「緋牡丹(ひぼたん)」というサボテンがありまして、赤や黄、ピンクといったカラフルな姿で目を引きます。今回はこの緋牡丹(ひぼたん)を竜神木に接ぎ木する方法について、実際に作業している様子と共に解説します。
それでは、どうぞ!
緋牡丹を接ぎ木する理由

緋牡丹は単独では生きられない
ビビッドなカラーが可愛い緋牡丹ですが、実はこれ、遺伝的な変異で葉緑素が全て無くなった斑入り(全斑)のサボテンなのです。元の種類は牡丹玉(ぼたんぎょく:ギムノカリキウム属の一種)です。
葉緑素を持たない緋牡丹は単体では光合成ができない、すなわち単独では生きて行けません。そこを何とか生かすために考えられた結果、接ぎ木によって別のサボテンと合体する方法がとられています。土台のサボテンが光合成をして養分を送り、上にくっついている緋牡丹を生かす仕組みです。
一般的に流通している緋牡丹の土台となるサボテンは大半が三角柱と呼ばれるサボテンで、成長が早く台木を確保しやすい事が選ばれる理由です。ただ、この三角柱には長持ちしないという欠点もあります。数年以内に腐って枯れてしまう事が多いようです。
そこで本題です。もっと丈夫な種類のサボテンに接ぎ木すれば緋牡丹を長生きさせられるのではないか!?というわけで、台木として優良と言われる「竜神木」に緋牡丹の子株を接ぐ事にしました。
台木としての竜神木の性質

竜神木は多くのサボテンに対して相性が良く万能台木と言われます。成長速度では三角柱に劣るものの、長持ちするため永久台木と呼ぶ方もいるようです。実際には下から徐々に木質化していくので、半永久といったところでしょうか。それでも葉緑素がある限りは穂木を長く支えてくれます。棘が少なくて扱いやすい点も良いところです。
耐寒性は中程度ですが、接ぎ木する緋牡丹も同様なので今回は問題ありません。
サボテンの接ぎ木に適した時期
サボテンの接ぎ木に向く時期としては、一番が晩春から初夏(4~5月頃)です。この頃はサボテンが活動し始めて、気候も穏やかで蒸散が激しくなく、接ぎ木が成功しやすい時期となります。接ぎ木作業後に成長シーズンを長く確保でき、充実した状態で冬を迎えられる点でも向いています。
次に晩夏から秋口(9月頃)も接ぎ木が可能です。ただし穂木がまだ小さい状態で冬を迎えるため、冬越しの維持管理には少し注意が必要と考えられます。
それ以外の時期でもできるようですが、失敗のリスクが高まるので適期に行うのが無難です。
サボテンの接ぎ木に使うもの

以下のものを用意します
- 竜神木(台木)
- 緋牡丹(穂木)※子株つき
- カッターナイフ
- 接ぎ木テープ(本来とは違う使い方をします)
- セロハンテープ
台木と穂木、切る道具、台木と穂木を固定する何かがあれば準備は完了です。穂木にする緋牡丹は手ごろなサイズの子株が複数ついているものを用意すると、失敗した時にやり直しができます。
カッターナイフはなるべく新品の刃に替えて、油を落とした上で消毒してから使うと良いです。また、同時に複数の株で接ぎ木をする場合は随時消毒するのがおすすめです。
緋牡丹を竜神木に接ぐ手順
ここからは手順の解説です。穂木の固定方法は私なりの方法です。
台木のカットと面取り


竜神木の先端から1cmほどを水平に切ります。一回でスッと綺麗に切るのがポイントです。
次に角を斜めに面取りします。これは後で台木の中心部が凹んで穂木が外れるのを防ぐためです。
子株の取り外しと切り直し


穂木となる子株を親株から外します。ひねるとコロンと外れます。
取り外したら穂木の下部を薄く切って断面を出します。子株は10mmくらいあると作業が楽です。小さくてもできますがちょっと大変です。
なお、穂木が台木と同じくらい大きい場合は、台木と同様に面取りした方が良いかなと思います。
維管束を合わせる

ここが一番重要です。サボテン類の維管束というのは樹木とは様子が全く違います。断面的に見ると中央寄りにあり、小さな輪のように見えます(樹木の場合は外周側にあり樹皮のすぐ下にある)。台木の輪と穂木の小さな輪がクロスするようにイメージして配置します。とは言っても穂木を乗せると見えないので心の目で見ましょう。
???:「見える、私にも見えるぞ!」
・・・
・・・見えない方のために図解です。

台木と穂木の大きさに差がある場合、中心点をドンピシャで重ねてしまうと穂木の維管束が台木の維管束の内側に入ってしまい、維管束が交差しないため接ぎ木は失敗します。「ちょいずらし」が極意(?)です。
テープを使って固定


良い位置に穂木を置けたらずれないように固定します。この段階で最終調整します。固定方法は色々あるようですが、私は接ぎ木テープとセロハンテープを併用する手法を編み出しました。どのように使うかというと短く切った接ぎ木テープの両端にセロハンテープを繋ぎ一本のテープにします。
穂木には伸縮性のある接ぎ木テープの部分を当て、セロハンテープの部分で鉢に固定します。台木と穂木が密着するようにテープを軽く引っ張りながら鉢に留めます。
2週間は明るい室内で養生
接ぎ木作業から2週間程度は強い日光や強風を避けた風通しの良い室内で管理します。レースのカーテン越しくらいの光で大丈夫です。
適期であれば2週間程度でくっつきますので、この頃に仮止めのテープを外します。ここは穂木が外れないように慎重に作業しましょう。
接ぎ木後の管理
その後は屋外に移動して通常通りの管理で育成します。原種の牡丹玉も含めて、サボテンのわりに直射日光が苦手ですので、少し遮光した環境に置きましょう。
水やりについては、切断面が硬くなるまではしばらく上から水をかけない方が良いかなと思います。
穂木がぷっくりした状態を保っていれば、とりあえず接ぎ木は成功です。失敗の場合は穂木が変色して枯れてしまいますが、台木が生き残っていれば再チャレンジが可能です。穂木が一回り大きく成長してくれば安心です。
あとは、たまに台木から脇芽が出てくる場合があり、脇芽が成長すると養分がとられて穂木が大きくならないので、随時切り取るようにします。
実際に接ぎ木したサボテンを紹介
ブランチ仕立ての枝分かれした竜神木にオレンジとピンクの2色の緋牡丹を接いでみました。夢の2色接ぎです。



接いだ時の穂木の直径は1cmほどでしたが、5カ月で2倍近くになり早くも子株(もはや孫株?)が生まれています。
2色接ぎの緋牡丹はおそらく普通には売ってないのではないでしょうか。オリジナルの一点ものを生み出せるのも自分で接ぎ木する醍醐味ですね。その他も含め4色の緋牡丹を接ぎ木で増やして育成中です。
サボテンの接ぎ木は意外と簡単かも?

サボテンの接ぎ木をやってみたところ10回の内で7回成功という結果で、意外と成功率が高めでした。少しずつ大きくなっていて今後の成長が楽しみです。親株も含めて実際に何年くらい生きるのかも検証していこうと思います。
子株の接ぎ木は何となくコツが掴めてきたので、今後は親株を別の台木に接ぎ直せるのかも研究してみたいです。
樹木医の仕事としてサボテンの接ぎ木を行う事はまずありませんが、研鑽を積む一環として、これからも守備範囲を広げていこうと思います。どなたかの役に立ちましたら幸いです。

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