花芽分化をふまえた花木・庭木の剪定方法と時期(一覧表あり)

こんにちは、キープランツの野口です!

花が咲く前の状態は蕾(つぼみ)と呼びますが、蕾の前の段階について考えた事はありますか。

実はこの花と蕾は、植物の種類によっては前年から「芽」として準備されていて、専門的には「花芽(はなめ/かが)」と呼びます。

例えば、桜の場合は前年の夏頃には花芽ができ、冬の寒さを乗り越えて、翌年の春に花を咲かせます。つまり半年以上も前に開花の準備がされている事になります。一方で、バラやサルスベリ等はその年に伸びた枝に花が咲くため、準備期間が短いと言えます。

今回は花を楽しむために欠かせない花芽について解説していきます。

この記事は以下のような人におすすめ!

  • 花芽分化について知りたい
  • 花芽ができる時期を一覧表で見たい
  • 剪定時期を間違えて花が咲かなかった

花芽の特性を知らずに剪定すると、せっかくの花が楽しめないなんて事も起こります。開花習性と剪定のポイントを押さえて、お花を最大限に楽しみましょう。

それでは、どうぞ!

花芽とは

芽の種類-花芽と葉芽

樹木の芽には種類があり、成長後に花になる芽を花芽、葉になるものを葉芽と呼びます。花になるか葉になるかは、細胞分裂で新しい芽ができる際に決まります。

花芽分化

日本を含む温帯に生息する樹木の多くは、基本的には夏までに枝葉の主要な成長を終え、夏から秋にかけて翌年に向けた芽が作られます。この段階において花芽ができる事を花芽分化(はなめぶんか/かがぶんか)と呼び、特に翌春に咲く種類はこの傾向が良く当てはまります。

なお、花芽分化は、栄養状態や成長の段階・樹齢にも左右されます。苗木や生育年数が短い場合は花が咲きにくい事が多いです(いわゆる桃栗三年柿八年...)。強い剪定をした翌年は花が咲かなかったり、日照不足や栄養不足で花つきが悪くなる現象も見られます。

開花習性を決める4つのポイント

開花の特性には以下のポイントがあり、この組合せで概ね決まります。

ポイント

  • 当年枝と前年枝
  • 花芽のできる位置(頂芽と腋芽)
  • 花芽から枝の伸長があるか
  • 長枝と短枝の区別があるか

それでは詳しく見ていきましょう。

1. 当年枝と前年枝

当年枝は春以降に新しく伸びた枝を、前年枝は去年伸びて冬を越した枝を指します。

大半の花木は、春以降に伸びた新しい枝に花芽ができます。そして、その年の内に開花する当年枝タイプと、花芽が冬を越して翌年に開花する前年枝タイプに大別できます。

2. 花芽のできる位置-頂芽と腋芽

植物の芽は、一般的には枝の先端か葉の付け根に作られます。先端の芽は頂芽(ちょうが)、葉の付け根の芽は腋芽(えきが/側芽とも)と呼びます。

花芽のできる位置は樹種によって異なり、頂芽または腋芽のいずれか、あるいは両方の3通りです。

頂芽のみが花芽となるタイプは、枝の途中にある腋芽は全て葉芽になります。また、腋芽のみが花芽となるタイプの多くは、頂芽に葉芽ができます。

3. 花芽から枝の伸長があるか

開花までの花芽の動きは2通りあります。 花芽から蕾が伸びてその位置で開花するタイプと、花芽から少し枝を伸ばした後に開花するタイプがあります。

なお、枝を伸ばしてから開花するタイプであっても、前年に花芽ができているため、当年枝タイプとは区別します。花が咲くかどうかは前年にできた芽の段階で決まっています。

4. 長枝と短枝の区別があるか

樹種によっては、花芽がつきやすい枝とつきにくい枝が分かれる場合があります。太く長い枝と細く短い枝が分岐しながら伸びる樹種では2種類の枝が混在することになり、繁殖(開花・結実)と成長(枝の範囲拡大)の役割を分担します。

開花習性パターンは6タイプ

開花習性パターンは、先ほどの4つのポイントの組合せで概ね決まります。大きく分けると以下の6タイプとなり、細かく分けると11通り考えられます。この後、図と合わせて解説します。

分類開花習性の詳細
タイプ1前年枝の短枝の腋芽に花芽ができ、その位置で開花
タイプ2前年枝の頂芽に花芽ができ、その位置で開花
2-1前年枝のうち、長枝の頂芽に花芽ができる
2-2前年枝のうち、短枝の頂芽に花芽ができる
タイプ3前年枝の頂芽とその下の腋芽が花芽となり、枝が伸びて先端に開花
タイプ4前年枝の葉腋に花芽ができ、新枝がわずかに伸びて開花
4-1前年枝の短枝の葉腋が花芽となり、わずかに伸びて先端に開花
4-2前年枝の長枝の葉腋が花芽となり、わずかに伸びて開花
4-3前年枝のごく短い枝に花芽ができ、わずかに伸びて先端に開花
タイプ5充実した前年枝の、頂芽とすぐ下の腋芽に花芽ができ、新枝が伸びて、葉腋に開花
タイプ6当年枝に開花
6-1花芽は無く、伸びた枝の先端に蕾ができて開花
6-2花芽は無く、伸びた枝の各葉腋に蕾ができて次々に開花
6-3短枝の葉腋に花芽ができ、年内に開花
開花習性タイプの分類

参考:株式会社講談社エディトリアル,  ”花芽のつき方(開花習性)、6つのタイプ”, ガーデン植物大図鑑, 株式会社講談社, 2008年11月発行, P.324-325

タイプ1. 前年枝の短枝の腋芽に花芽ができ、その位置で開花

花芽分化と剪定の図(ウメなど)
花芽分化と剪定の図(ウメなど)

短い枝にある葉の付け根に花芽ができ、長い枝にはあまり花芽が作られません。花芽分化後の剪定では、長枝を切り、短枝を残します。

例:ウメ、モモ、フジ

タイプ2. 前年枝の頂芽に花芽ができ、その位置で開花

枝の先端に花が咲くタイプです。このタイプは更に以下のように分かれます。

  • 前年枝のうち、長枝の頂芽に花芽ができる
  • 前年枝のうち、短枝の頂芽に花芽ができる

2-1. 前年枝のうち、長枝の頂芽に花芽ができる

花芽分化と剪定の図(ライラックなど)
花芽分化と剪定の図(ライラックなど)

花芽分化後の剪定では、短枝を切り、長枝を残します。長枝の枝先は切りつめないようにします。長い枝は切りがちなので、剪定に注意が必要なタイプです。

例:ライラック

2-2. 前年枝のうち、短枝の頂芽に花芽ができる

花芽分化と剪定の図(ツバキなど)
花芽分化と剪定の図(ツバキなど)

花芽分化後の剪定では、長枝を切り、短枝を残します。短枝の枝先は切りつめないようにします。

例:モクレン、ツバキ、シャクナゲ、ツツジ、サンシュユ

タイプ3. 前年枝の頂芽とその下の腋芽が花芽となり、枝が伸びて先端に開花

花芽分化と剪定の図(アジサイなど)
花芽分化と剪定の図(アジサイなど)

花芽分化後の剪定では、枝の間引きを主体として、切らない枝を残すようにします。花芽が枝の先端にあるため、全ての枝を切りつめると花が咲かなくなります。

例:ボタン、アジサイ、トチノキ

タイプ4. 前年枝の葉腋に花芽ができ、新枝がわずかに伸びて開花

このタイプは更に以下のように分かれます。

  • 前年枝の短枝の葉腋が花芽となり、わずかに伸びて先端に開花
  • 前年枝の長枝の葉腋が花芽となり、わずかに伸びて開花
  • 前年枝のごく短い枝に花芽ができ、わずかに伸びて先端に開花

4-1. 前年枝の短枝の葉腋が花芽となり、わずかに伸びて先端に開花

花芽分化と剪定の図(オオデマリなど)
花芽分化と剪定の図(オオデマリなど)

花芽分化後の剪定では、長枝を切り、短枝を残すようにします。

例:オオデマリ、ガマズミ

4-2. 前年枝の長枝の葉腋が花芽となり、わずかに伸びて開花

花芽分化と剪定の図(ヤマブキなど)
花芽分化と剪定の図(ヤマブキなど)

花芽分化後の剪定では、その年に伸びた新しい枝の一部を残すようにします。新しい枝を根元から切ると花は咲かなくなります。

例:ヤマブキ、ユキヤナギ、コデマリ

4-3. 前年枝のごく短い枝に花芽ができ、わずかに伸びて先端に開花

花芽分化と剪定の図(リンゴなど)
花芽分化と剪定の図(リンゴなど)

花芽分化後の剪定では、長枝を切り、短枝を残すようにします。

例:リンゴ、ナシ、カイドウ

タイプ5. 充実した前年枝の、頂芽とすぐ下の腋芽に花芽ができ、新枝が伸びて、葉腋に開花

花芽分化と剪定の図(カキなど)
花芽分化と剪定の図(カキなど)

花芽分化後の剪定では、開花・結実した枝を切ります。充実した長い枝は間引き剪定とし、切り詰めずに残すようにします。この長枝は切りがちなので、剪定に注意が必要なタイプです。

例:カキ、クリ

タイプ6. 当年枝に開花

このタイプは更に以下のように分かれます。

  • 花芽は無く、伸びた枝の先端に蕾ができて開花
  • 花芽は無く、伸びた枝の各葉腋に蕾ができて次々に開花
  • 短枝の葉腋に花芽ができ、年内に開花

6-1. 花芽は無く、伸びた枝の先端に蕾ができて開花

花芽分化と剪定の図(バラなど)
花芽分化と剪定の図(バラなど)

剪定は花後から翌年の芽吹き前までに行えば良く、どこで切っても花が咲きます。新梢は開花するまで切らないようにします。四季咲き性のバラ等では、花後すぐに剪定すると返り咲く事もあります。

例:バラ、ヒペリカム類(ビョウヤナギほか)、ノウゼンカズラ、ノリウツギ、アメリカノリノキ'アナベル'

6-2. 花芽は無く、伸びた枝の各葉腋に蕾ができて次々に開花

花芽分化と剪定の図(ムクゲなど)
花芽分化と剪定の図(ムクゲなど)

剪定は花後から翌年の芽吹き前までに行えば良く、どこで切っても花が咲きます。新梢は開花まで切らないようにします。

例:ムクゲ、フヨウ、ハギ

6-3. 短枝の葉腋に花芽ができ、年内に開花

花芽分化と剪定の図(キンモクセイなど)
花芽分化と剪定の図(キンモクセイなど)

剪定は花後から翌年の芽吹き前までに行えば良く、どこで切っても花が咲きます。新梢は開花までなるべく切らないようにします。なお、花芽分化後でも枝先の軽い剪定や間引き剪定であれば多少の開花は見込めます。

例:キンモクセイ

ベストな剪定時期の考え方

剪定時期について言える事としては、花後すぐの軽い剪定なら花芽の形成に影響は出にくいです。但し、弱い剪定では年々大きくなってしまうため、樹木のサイズを維持する場合は、太い枝の剪定も必要となります。この場合は休眠期等の負担のかかりにくい時期が良いですが、開花への影響はどうしても大きくなります。

一般に剪定の適期と言われるのは、落葉樹では休眠期にあたる12月頃、常緑樹では気候の穏やかな3月、6月、9月等です。これは鋸(のこぎり)を使って太い枝を切るような剪定を想定したものです。

剪定に適さない季節としては、新芽が伸びた後の若葉の頃(前年に貯めた養分を消費してしまっている)や、夏季(日焼けやエネルギーの消耗が激しい)、常緑樹における厳冬期(寒さでダメージを受ける)等です。

総合的に考えると、生理的に適した時期かつ、花芽を残す剪定作業ができればベストと言えます。

樹種別の花芽分化・剪定時期の一覧表

身近な花木を中心に、花芽分化と剪定時期について100種類をまとめてみました。

剪定方法の詳細は植物毎に調べた方が確実ですので、網羅的な参考資料としてご覧ください。私自身の備忘録を兼ねているのはナイショです。

樹木の種類花期花芽分化タイプ剪定適期
あ行
アケビ4~5月7~8月41~2月
アジサイ5~8月9~10月3花後, 1~2月
アセビ3~4月7~8月112~2月
アベリア7~10月7~9月611~3月
アメリカノリノキ5~8月5月611~3月
アンズ3~4月7~8月11~2月
イチゴノキ11~12月7月23月
イチジク7~8, 8~10月5月~112~2月
ウツギ5~6月7~8月412~2月
ウメ2~3月6~7月112~2月
ウメモドキ6月7~8月112~2月
エゴノキ5~6月7~8月41~2月
エニシダ5~6月7~8月1花後
オウバイ2~4月6~7月1花後
オオデマリ5~6月7月41~2月
オリーブ5~6月12~1月13月
か行
カキ5月7~8月512~2月
カシワバアジサイ5~8月9~10月31~2月
ガマズミ5~6月7月41~2月
カラタネオガタマ4月7~8月1花後
カリン4~5月7~8月11~2月
カルミア5月7~8月210~12月
カンキツ類5~6月8~9月53月
キョウチクトウ6~9月7~9月28~9月
キンシバイ6~9月5月612~2月
ギンバイカ5~6月7月13月
キンモクセイ9~10月6~7月610~12, 2~3月
クチナシ6~7月7~8月27~8, 12月(軽剪定)
クリ5~6月7~8月512~2月
コデマリ4~5月8~9月4花後
コバノズイナ5~6月8月12月, 6月
コブシ3~5月6~7月21~2月
コムラサキ6~7月5月62~3月
さ行
サクラ3~4月,他6~8月21~2月
ザクロ6月8月12~3月
サザンカ10~12月6~8月22~3月
サツキツツジ5~6月6~8月26月
サルスベリ7~10月6~9月62~3月
サンシュユ3月7~8月22~3月
シモツケ5~7月5~7月62月
シャクナゲ5~7月6~7月210~12月
ジューンベリー4~5月7~8月41~2
ジンチョウゲ3~4月7月25~7月
スモークツリー6~7月7~8月33~5月
セイヨウニンジンボク7~9月5~7月612月、2月
た行
タイサンボク6~7月8月211月, 3月
ツバキ10~5月6~7月23~5月
テイカカズラ5~6月7~8月26~7月
ドウダンツツジ4月7~8月25~6月, 12月
トキワマンサク4~5月6~7月45月(刈込), 2~3月(枝抜)
トサミズキ3~4月8月22~3月
トチノキ5月6~7月31~2月
な行
ナシ4月6~7月412~2月
ナツツバキ6月7~8月51~2月
ナンテン6~7月7~8月211~3月
ニワウメ4月7~8月11~2月
ノウゼンカズラ7~9月7~8月62~3月
ノリウツギ7~8月4月611~3月
は行
バイカウツギ6月8月11~2月
ハギ6~9月4~6月612~2月
ハクチョウゲ5~6月6月1花後
ハナカイドウ4月7月412~2月
ハナズオウ4月7月21~2月
ハナミズキ4~57月212~1月
バラ5月(~11月)612~2月
ビバーナム(常緑ガマズミ)3~5月8~9月42~3月
ヒメリンゴ5~6月7~8月412~2月
ヒュウガミズキ3~4月7~8月12~3月
ビヨウヤナギ6~9月612~2月
ピラカンサ5~6月7~8月22月,9~10月
ヒラドツツジ4~5月6~8月25~6月
フェイジョア6月7~8月13月(枝抜)
フジ4~6月7~8月112~2月
ブッドレア6~9月62~3月
フヨウ8~10月612~2月
ブラシノキ5~6月7~8月13月(枝抜)
ブルーベリー4月7~8月21~2月
ボケ3~4月7月12月
ボタン5月8~9月35~6月
ま行
マユミ5~6月8月212~2月
マンサク2~3月6~7月212~2月
ミツバツツジ4月6~8月211~12月
ミツマタ3~4月8月22~3月
ミモザ(ギンヨウアカシア)2~3月7~8月13~4月
ムクゲ7~8月5~7月612~2月
ムラサキシキブ6~7月5月62~3月
モクレン3~5月6~7月212月
モモ(ハナモモ)4月7月112~1月
や行
ヤマブキ4~5月7~8月42月
ヤマボウシ5~6月7~8月21~2月
ヤマボウシ(常緑)5~6月7~8月26月
ヤマモモ4月7~8月17月, 12月
ユキヤナギ3~4月8月41~2月, 4月
ユスラウメ4月7月11~2月
ら行
ライラック4~5月8月21~2月
リンゴ5~6月7~8月412~2月
レンギョウ3~4月6~7月14月(刈込), 1~2月
レンゲツツジ5月6~8月211~12月
ロウバイ12~2月6~7月112~2月
ロドレイア4~5月7~8月12~3月
花期・花芽分化・剪定時期の一覧表

※開花及び花芽分化の時期は目安です。また、剪定時期は一例です。品種や立地、その他諸条件で前後する場合があります。

まとめ

以上、花芽分化と剪定についてご紹介しました。今回の内容をまとめると以下の通りです。

内容のまとめ

  • 花芽分化は大きく分けると6タイプある。
  • 花木の剪定は、樹種毎に適した時期と方法がある。
  • 前年枝に翌年開花するタイプは花芽のつき方に合わせた剪定が良い。
  • 当年枝に開花するタイプは萌芽までに剪定すれば花が咲く。
  • 樹木の生理的に適した時期かつ、花芽を残すよう意識するのがコツ。

ご自宅の庭木を自分で剪定している方や、庭園管理を担当している方などの参考になれば幸いです。

記事を読んだけど、剪定はやっぱり難しいという方、もしお困りでしたらキープランツにご相談ください。お力になれるかもしれません。

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