庭木や草花の寒さ対策について

こんにちは、キープランツの野口です!

秋も深まり、一気に寒くなりましたね。お庭でこの時期に気になるのは、植物の防寒対策ではないでしょうか?

簡単にできる方法としては、マルチングや不織布のシートで被う等が有効です。今回は防寒対策の考え方やコツについて解説します。

この記事は以下のような人におすすめ!

  • 植物が寒さで枯れないように対策をしたい
  • 庭で簡単にできる防寒対策を知りたい
  • 寒さ対策のコツを掴みたい

防寒対策を行うと、冬越しだけでなく、春以降の生育にも差が出てきます。私が管理する庭でも冬前にマルチングをして、寒さの厳しい季節を乗り切っています。

本格的な冬を迎える前に準備をして、寒さや霜、凍結から植物を守ってあげましょう。

それでは、どうぞ!

寒さが植物に与える影響

まずは基本から押さえていきましょう。

植物の低温障害について

植物には、種類ごとの生育に適した温度範囲があります。この範囲を下回った環境で育てたときに発生するのが低温障害です。

一般的に15°を下回ると低温障害が起こり始め、温度が低いほど、また低温に晒される時間が長いほど被害が大きくなります。

軽微なものでは生育の停止、影響が大きくなると葉や枝の枯れ、開花不良、根腐れ等が発生し、最悪の場合は全体が枯れてしまいます。

一度被害を受けてしまうと、温度を上げても元に戻ることは無く、時間が経ってから腐敗等の症状が進行することもあります。

凍害と霜害

0°を下回る低温で凍った時の障害は、「凍害(とうがい)」と呼びます。また、霜の影響で植物が凍結した場合は「霜害(そうがい)」と呼びます。

植物にとって、これらの凍結による影響が、一番ダメージが大きいです。葉や茎の細胞が凍って壊れ、変色やフニャフニャに萎れる症状が出ます。また、寒冷地では樹木の幹が凍って割れる等の症状が発生します。

枯死しなくとも、花芽が凍害で枯れて花期に開花しない例もあります(寒冷地に植えたアジサイ等)。

植物が寒さに耐える仕組み

植物は進化の過程で、寒さに耐える能力を身につけてきました。

例えば、細かい毛をまとって断熱効果を高めたタイプや、糖分の濃度を高めて凍らないようにする(いわゆる不凍液)タイプ等が挙げられます。

また、一時的に冬芽を脱水状態にしたり、細胞の外側の水分を凍らせて細胞本体を守る等、特殊なメカニズムもあるようです。

参考:冬に植物は凍らないの? 植物が寒さを生き延びるしくみ|BuNa - Bun-ichi Nature Web Magazine |文一総合出版(外部サイト)

耐寒性とは

植物の寒さに対する特性を「耐寒性(たいかんせい)」と言います。基本的には植物の原産地や育った環境によって決まり、植物毎に異なります。

耐寒性にはある程度の傾向があるので、目安を表にまとめてみました。以下をご覧ください。

耐寒性高い
(寒さに強い)
やや高いやや低い低い
寒さに弱い)
限界温度の目安-5°以下-5°~0°0°~5°5°~15°
原産地の環境落葉樹林、針葉樹林、草原常緑樹林乾燥地、岩場ジャングル
気候帯冷帯(亜寒帯)、温帯温帯の一部乾燥帯熱帯
園芸上の分類落葉樹、針葉樹、落葉性の多年草(宿根草)常緑樹、常緑性の多年草サボテン、多肉植物観葉植物
耐寒性の簡易分類表

寒冷地や雪国生まれの植物は寒さに強く、熱帯のジャングルや南国生まれの植物は寒さに弱いです。

サボテン等、故郷が乾燥地の植物は少しだけ寒さに強い場合があります。これは、一日の寒暖差が大きく、一時的な低温(氷点下を下回らない程度)には耐えられるよう進化したためだと考えられます。

形態別の傾向としては、針葉樹や落葉樹、冬に地上部が無くなる宿根草は耐寒性が高く、0°以下でも平気なものが多いです。一方で、常緑樹や多肉植物は耐寒性が低めの樹種が多いです。

以上のように簡易的に分類してみましたが、植物の種類は多種多様で性質もバラバラです。サボテンを例に挙げると、砂漠に生える種類だけでなく、ジャングルの樹木に着生するタイプ(例:リプサリス等)がある等、とても幅があります。また、豪雪地帯の植物は、雪で守られる前提のため意外に寒さ(特に乾寒風)が苦手な事もあります(ユキツバキ等)。

植物ごとの特性をキッチリ調べる事が、冬越し成功の第一歩ではないかと思います。

耐寒性ゾーンを調べる

防寒対策は、お住まいの地域によって気候が違うため、対象となる植物や防寒方法も異なります。そのような時に役に立つのが、「耐寒性ゾーン(又はHardiness Zone/ハーディネスゾーン)」です。

これは、地図上で寒さの強さを細かくゾーン分けしたもので、屋根のない露地植えの環境で越冬できるかどうかの目安となります。日本では3aから12bまで20段階あります。

元々はアメリカ合衆国農務省が自国用に開発したものです。日本では園芸メーカーの『PROVEN WINNERS』等が独自に作成・公開していて、取り扱う苗に関しても、種類別に数値を表示しています。

日本の耐寒性ゾーンマップ

参考:耐寒性ゾーン | PW【植物の国際ブランド】 花苗|シュラブ(低木)|ペレニアル(宿根草・多年草)|多肉植物 の育つよろこびをお届けします (provenwinners.jp)(外部サイト)

使い方としては、まずはマップで対象地域の該当するゾーンを調べ、次に植物ごとの適応可能なゾーンと照らし合わせて使用します。適応ゾーンを外れてしまっている植物を育てる場合、防寒対策が必要と判断します。

東京の耐寒性ゾーンマップ

ちなみに、キープランツのある東京都羽村市はゾーン8bです。

試しにPROVEN WINNERSが扱っているスーパーアリッサムを調べてみると、耐寒性ゾーンは「9a~」でした。羽村市は「8b」で1段階寒いので、冬越しは防寒対策が必要と判断できますね。

以前、東京都の23区内(ゾーン9aや9b)で問題なく育っていた植物を、西多摩地域(ゾーン8b)で植えたら越冬できなかったという苦い経験もあり、個人的には大事にしている要素です。

なお、日本の園芸業界では耐寒性ゾーンの考えがそこまで普及していないため、参考程度に活用しましょう。将来的に図鑑や園芸ラベルに記載されるようになると良いですね。

植物を調べたい場合は、検索エンジンにて「(調べたい植物の学名) Hardiness Zone」で検索すると確認することはできます。残念ながら、今のところは海外のサイトが大半です。

植物のための防寒対策の方法

ここからは防寒対策の具体的な方法をご紹介します。

主な防寒対策の例

マルチング

マルチングとは、地面を被覆資材でカバーする事を指します。地面に冷気が当たりにくくなり、根の凍結防止や、霜柱対策に有効です。

草花や宿根草、背の低いグランドカバー類に適した方法です。見た目をナチュラルにできる点も特徴です。

いろいろな素材が使用でき、ガーデニングでは、樹皮系チップ材、腐葉土、落ち葉、クルミの殻、ヤシの繊維、敷き藁等の自然素材が好まれます。家庭用のチッパーを持っていれば、剪定した枝を粉砕して使用することもできます。

なお、農業分野でのマルチと言えば、黒いフィルム状の物がよく使用されます。

シート系資材

べたがけシート

寒冷紗、不織布(ベタがけシート)、防風シート等も便利な資材です。植物本体を包み込むことにより冷気を遮断します。

汎用性が高く、小さな草花から、大きな樹木にまで対応できます。

樹木等では、ぐるっとひと巻きして紐で縛れば作業完了です。背の低いグランドカバー等には、複数まとめてシートを上からかけて、周囲をピンや重石で固定します。

袋状になった製品(植物防寒カバー)も販売されています。サイズが上手く合えばお手軽な方法です。

こも巻き

こも巻き

寒さに弱いソテツ等に対して行われる防寒対策です。幹に直接「こも」を撒く伝統的な方法で、冬の風物詩になっている地域もあります。

「こも」とは、マコモという水生植物の葉を布状に織って加工したものを指し、現代ではわらを素材としたものが一般的です。広い意味では、先にご紹介したシート系資材のひとつと言えます。

ちなみに、マツのこも巻きは目的が異なります。害虫を誘い込むトラップとされていますが、最近は効果の低さが指摘され、行われなくなった所もあります。

わらぼっち

わらぼっち

わらぼっちは伝統的な和風の霜よけで、主に冬牡丹に用いられます。元になっているのは、稲作が終った田んぼにワラを束ね、保存のために積み重ねた風景で、これを庭に引用したものです。

設置の際は、陽光を取り込むために、開口部をなるべく南側に向けます。

機能性だけでなく、添景物としての美感もあり、日本の庭園文化の深みを感じる技法ですね。

トンネル栽培、ホットキャップ

トンネル栽培

トンネル栽培は農業でよく行われる手法です。曲がった支柱と透明のシートを組み合わせて冷気を遮断します。

ホットキャップは透明のプラスチック製のカバーです。主に野菜の苗に使用するものですが、宿根草の苗の防寒にも使用できます。

どちらも日光で内部が温められ、温室に近い状態になります。寒さにかなり弱い種類の保護や、温度を上げて早く花を咲かせる等の用途に向いています。

簡易的には、透明のビニール袋を使っても同様の効果が得られます。

温度が上がり過ぎる場合もあるので、開け閉めや、換気孔を設ける等の工夫が必要です。

室内や温室への移動

鉢植えで移動できる場合等に限られますが、一番簡単な方法です。寒さに弱い種類は最初から地植えにしない事も賢い選択だと思います。

また、特殊な例では、露地植えの植物を冬だけ掘り上げて温室に仮植してしまう方法もあります。

かつてターシャ・テューダーは、毎年の秋にゲッケイジュを掘り上げて温室に移動し、春になったら元の場所へ戻すという管理を行い、長期的に維持していたそうです。(参考:Eテレ『ターシャの森から/手作りの贈り物(2021年11月放送)』

植物の防寒対策のポイント

冬越しを成功させるためには、細かいポイントがあります。ひとつひとつ見ていきましょう。

暖かい場所を見極める

庭の中でも場所によって温度や冷え込み具合に差があります。暖かいスポットを見つけると、冬越ししやすくなります。

例えば、軒下、カーポートの下、常緑樹の下等は少しだけ暖かいです。これは放射冷却が軽減され、熱が逃げにくく、霜が降りにくいためです。また、陽だまりも日中に暖かくなるため冬越しが成功しやすい場所です。

反対に、窪地は冷気が溜まるので、冬越しには向きません。建物の北側等、日陰の時間が長い場所も良くありません。

水やりの時間帯を工夫する

日常管理の方法を工夫する事も大切です。

冬の水やりは良く晴れた暖かい日の午前10時~12時頃がベストです。水滴や余分な水分が減った状態で夜を迎えられるため、凍結による影響が少なくなります。

鉢植えは水を控える

乾燥気味に管理する事もポイントになります。特に寒さに弱い観葉植物や多肉植物に有効な手段です。種類によっては冬季だけ完全に断水することもあります。

雪に埋もれた状態はそのままにする

雪をかぶった状態は、かまくらに近い効果があり、植物の温度が極端な氷点下になりません。寒風が当たるよりは、雪の中に置いた方が冬を越しやすいと言えます。

また、無理に雪をどかそうとすると枝が折れてしまう原因にもなります。

以上の理由から、積雪後は、あえて雪かきをしないでおきましょう。

寒さが苦手な樹種は、冬前に剪定しない。

年末に庭木のお手入れをする方が多いですが、常緑樹は冬にバッサリと強く切り過ぎると、その後の低温で弱る事があります。特に寒さに弱いタイプの外来種や南方出身の樹木では注意が必要です(例:シマトネリコ、ヤマモモ等)。

これらの種類は春先(3月~4月上旬)か梅雨頃(6月)に剪定すると痛みにくいです。

一方で、落葉樹については年末は休眠期に入った頃となり、最も適した時期です。

余談ですが、落葉樹は春が近づくと樹液が動き始めるので、遅くとも1月の内に終わらせるのが良いです。2月~3月は、芽吹いてなくとも休眠から覚めており、樹種によっては剪定すると切り口から樹液が垂れるくらい出てきます(例:モミジ、イヌシデ等)。

まとめ

以上、植物の防寒対策についてご紹介しました。今回の内容をまとめると以下の通りです。

内容のまとめ

  • 植物ごとの耐寒性を調べておく
  • 地域の気候・最低温度を踏まえて対策を行う
  • 地面の防寒対策はマルチングやシート被覆が有効
  • 地上部の防寒対策はシート系資材やこも巻きが有効
  • 管理方法の違いでも耐寒性に影響が出る

植物の防寒対策は様々な手段がありますが、環境作りや方法を上手く組み合わせる事が大切です。

ぜひ冬越しをマスターして、様々な植物の栽培を楽しんでくださいね。

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